もっと遠く! もっと広く!
もっと遠く! もっと広く! の
中吊り広告が凄かった。
1983年11月のことである。
当時はこんなエネルギーがぴゅんぴゅん溢れていた。
2009年、ほとんどのエディトリアルデザインは
完成図が画面で視認できる。
視覚で仕事をしている気がしてくる。
デザイナ−も、出版社も、編集者も、著者までもが
すぐ修正できると思ってるし、実際にできてしまう。
水族館の魚のように、緊張感が格段に薄い。
最近までだ。
「見えない」作業に、赤い血が通っていた。
真っ黒なカーテンの向こう側を透視するように
脳内でガツガツ写真と文字を組み立てて、
紙に線を引く、その上に赤字で指定を書く、
ポジはダーマトで、タイトルは暗室で紙焼きに…
それでもまだ完成図は確認できない。
関わる全員が共通意識を背負って、
「ひとつ」を脳で作り上げる。
印刷所から初校が来て、初めて我が子と対峙する。
一発勝負の緊迫とキラメキと喜びのエネルギーが
全員のそこには存在していた。
視覚は、入り口でしかない。
脳みそを越えるツールなんてない。
便利になった分だけ、使い倒せ。
便利になった分だけ、面倒くさく。
便利になった分だけ、振りまわせ。
そして、俺が生きた記憶を
ここに標そう。
もっと遠く! もっと広く!
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11/6、30歳最後の夜に、
渋谷にniwaメンバーで
ドキュメンタリー「へんりっく 寺山修司の弟」を観に行った。
並んでもらった整理券は「30」と「31」
その1時間後、31歳になった。
さて、この1年が
人生でどんなに深い深い1年だったか孫に語れるように
悠々として急ぎましょうか、開高さん。
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